”バツイチになったのを機に、学校司書として働きはじめた詩織。人には言えない秘密を抱える彼女のもとに、さまざなな謎が持ちこまれる。本にこめられた想いと謎を読み解くブックミステリー。”
(amazonの内容紹介から引用させていただきました)
竹内真さんの著作はこれが初見ですが、『図書室のキリギリス』は本好きにはぐっとくる素敵な小説でした。
んー、本好きというとちょっと意味が広いかもしれません。本自体というよりは、図書室や本を通じてつながる出会いや人の心、本のある日常を愛する人に刺さる物語だと思います。
主人公がほんの少しだけサイコメトリー出来る設定だったりちょっとした日常の謎系ミステリーでもあるので、人の死なない優しいミステリーが好きな人にもおすすめです。
内容的には連作形式の短編5編からなっていて、全編楽しかったですが個人的には『小さな本のリタ・ヘイワース』がお気に入り。
※なるべく気を付けますが以下少しネタバレあるかもです。
舞台は図書室。新米司書さんの奮闘記
司書さんのお仕事がよくわかります。
主人公の詩織さんは司書資格も持っていませんが、学校司書という図書室の管理人(?)のような立場として司書業務をひとつずつ覚えていきます。
前任者の方のマニュアルや司書教諭の先生、時には生徒たちにも教わって仕事をこなしていく詩織さん。大学生のころ図書館でバイトしていた自分としては、そういった図書館業務を読んでいるだけでも懐かしく楽しかったです。
給与や雇用の話など厳しめの話も出てきますが、それも含めて本が大好きで前向きに生きようとする登場人物に励まされます。
周りの生徒や先生も個性的な人物が揃っています。手品好きな校長やポッタリアンの司書教諭、図書室常連の女の子や演劇部の部長などなど、退屈しません。
本を通じて広がる世界
作中にはいろいろな本が出てきます。文庫版の巻末に筆者の方のブックトークが書かれているように、出てくるのは実際にある本なので、読み終わった後にそれらを本屋や図書館で探してみたくなります。
(実際の本が出てくるという意味では『ビブリア古書堂の事件手帖』なんか近いですかね。こちらはビブリアよりもだいぶ優しくほっこりとした世界ですが。)
また、僕はこの本で『リテラチャー・サークル方式』という集団読書の方法論も初めて知りました。巷でたまにやっている自分の好きな本をみんなの前で紹介するブックトークは知ってましたが、ちゃんと係を決めて本をより読み込もうと取り組むこの方式は知らなかったです。
あまり周囲に読書について語れる友人がいないので実際にやるのは難しいかもしれませんが、機会があればやってみたいなーと思います。作中の子たちが自分の好きな本について語ったり、それについてリアクションする様子はとても楽しそうです。
僕は基本的には小説ばかり読んでますが、こうやって”人”が直接魅力を伝えてくれたものは自分の守備範囲以外でも興味が持てそうで視野を広げるにはぴったりな感じがします。
とまあ、この本を読んで新しく知ったことを多めに書いてしまいましたが、とても面白く優しい物語なので興味のある方ぜひお手に取ってみてください。
竹内真さんの別の著書も機会があれば読んでみようと思います。