映画感想:『6才のボクが、大人になるまで。』

6才のボクが、大人になるまで。 [Blu-ray]

ビフォアシリーズのリチャード・リンクレイター監督がまたまたやってくれました。彼の撮る映画はどうして何気ない日常シーンがこんなにも面白いんでしょうか。今回も会話のテンポがすごく楽しい。
というわけで「6才のボクが、大人になるまで。」(原題:Boyhood)を観てきました。

12年かけて一つの家族を描く

この映画では「子供が6歳から18歳になり、大学に進学して親元を離れるまでの12年間の親子関係」を描いています。

ビフォアシリーズではシリーズの続編を9年おきに作っていましたが、今回は撮影期間自体が12年かけて行われています。そのため主役の家族である4人(夫婦、姉、弟)には同じ役者を使っており、みんな自然に12年分年を取っていきます。
子供が微笑ましいなー、なんて見ていたらいつのまにか生意気な中学生になり、高校生になり、親元を離れる年齢になっていきます。

作中のカットも絶妙で、年月が飛ぶ瞬間もあまり気になりませんでした。
映画を見ると自分も一緒に12年間を過ごしたような、12年間の濃度を頭に詰め込まれたような、そんないっぱいいっぱいな気持ちになりました。映画はここで終わるんだけど、彼ら家族はこれからも続いていくんだろうな…みたいな。すみません、ちょっと何言ってるかわからないですね。

少年の成長に、身に覚えがあり過ぎる

メイソン少年が成長していく様子を、なんだかむず痒い気持ちで観ていました。

とても丁寧に12年間を描いているため、少年から青年に至るまでの心の機微や思春期のリアクションに、自分の経験を重ねてしまいました。いや、別にメイソン少年みたいに男運のない母親やロクデナシな父親たちに振り回されるような経験は別にないんですが…。
ふとしたシーンの端々に記憶を刺激されました。姉との兄弟喧嘩、男友達の付き合い、転校による不安や大人への失望感や不信感…。子供のころ、あぁ、多分自分もこんな顔してたんだろうなぁ、なんて共感しながら観ていました。

成長(?)するのはメイソン少年だけではありません、母親や父親、姉も12年かけてゆっくりと変わっていきます。個人的には父親のキャラクターや変化がとても好き。基本いわゆるダメンズではあるんですけど、メイソン少年はこの父親が居たからこそ逆境にあっても割とまっとうな青年になれたんじゃないかと思っています。
決して強い父親像ではないけれど、イーサン・ホーク演じる父親はある意味僕の理想に近い姿をしていました。

アカデミー賞が楽しみ

今月末に結果が出るアカデミー賞が楽しみですね!他にもそうそうたる受賞歴を誇る今作品ですが、ぜひアカデミー賞も何かしら受賞してほしい。
なぜなら受賞されれば上映館がきっと増えるから。先月僕が見に行った時、都内でも2館くらいでしか上映されておらず中々観に行くタイミングが掴めませんでした。
いい作品なので、もっと日本でもたくさんの人に観てほしいです。

そしてこの作品が気に入ったなら、ぜひ同じリンクレイター監督のビフォアシリーズも観てほしいなーなんて思います。
『6才のボクが、大人になるまで。』では人生という時間を切り取っていますが、ビフォアシリーズでは恋という時間を切り取っています。
(いや、ミッドナイトは愛の時間かもしれませんが)
あ、ビフォアは出来れば恋人とお喋りをしながら観るのが1番楽しいかもしれません。

リンクレイター監督の次回作を待ちながら、とりあえず『6才のボクが、大人になるまで。』はもう一度観たいと思います。