読書感想:『千年万年りんごの子』

千年万年りんごの子(1) (KCx ITAN) 千年万年りんごの子(2) (KCx ITAN)

雪深いりんごの国に婿入りした雪之丞。昭和の激動から離れ、北の家族と静かに巡る四季は親を知らない彼の中になにかを降り積もらせてゆく。それは冬、妻の朝日が寝込んだ日。雪之丞の行動が、りんごの村に衝撃を与えた。りんごの時間が動き出す、田中相初連載作!
(amazonの内容紹介から引用させていただきました)

第17回文化庁メディア芸術祭の漫画部門新人賞とのことで田中相さんの『千年万年りんごの子』を手に取ってみました。

綺麗な表紙と絵、タイトルを見て、読む前はりんご農家の日々を描いた日常系のお仕事漫画かなと思ったのですが、読んでみると内容はファンタジーでした。いや、ファンタジーというより怪奇談という方が正しいかもしれません。漫画であれば『蟲師』、小説であれば恒川光太郎さんの著作が好きな方にはお勧めの作品です。

作品世界全体に人では抗い難い神様の気配が漂っています。八百万の神様がいる日本だし、りんごの神様だっているよねとは思うのですが、この神様が予想外に怖い。
個として神様が描かれているわけではなく、あくまでも神様が起こすという現象が次々と雪之丞と朝日に降り掛かってくるという話です。正体が見えない漠然としたものって無条件で恐怖を煽ります。

この漫画はそんな怖い神様から妻・朝日を守るために夫・雪之丞が孤軍奮闘するという方向に物語が走るようです。
初めは単なる利害の一致で見合い結婚をした2人でしたが、一緒に暮らすうちにゆっくりと恋をしていく雪之丞と朝日が丁寧に描かれていて、ついつい感情移入してしまいます。
打開策も見えず、村人の協力も得られない。そんな状況でも神様から朝日を取り戻す決意をする雪之丞はかっこよかった…。雪之丞には頑張って朝日を救ってほしいです。

ただ、雪之丞が決意するほど、2人の絆が深まるほどに悲劇フラグが高まっていく雰囲気なので気が気じゃありません。妻・朝日が運命を受け入れてしまっているように見えることも気がかりです。

なんにせよ、まだ2巻。次巻が出るのは来年3月のようなので気長に待たねばなりません。

あぁ、でもハッピーエンドになると良いなぁ。

→ 最終巻の感想も書きました!

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