読書感想:4巻完結の漫画『 海月と私 』(麻生みこと)

海月と私(1) (アフタヌーンKC)

大ヒット作『路地恋花』の麻生みこと最新作! 海沿いの辺ぴな宿「とびうお荘」は、主人とワケあり看板娘のたった2人で営業中。この宿にたどりつけたお客は、最高においしい食事とちょっとした幸運にありつけます。
(amazonの内容紹介から引用させていただきました)

京都のクリエイター長屋を舞台にした『路地恋花』も大好きですが、今回の海月と私もとても素敵な漫画です。
ひなびた小さな宿屋の主人のところに突然現れた、明るく人懐っこいけどミステリアスな住み込みの美人中居さんの物語。宿に来るお客さんたちのエピソードを描きながら、変わっていくふたりの関係を見守るのが楽しい作品です。謎あり恋あり人情あり、見どころ満載です。
映像的にも映えそうなのでぜひ実写化希望!ドラマでも良いですが、4巻完結のすっきり構成なので普通に映画化でもいいなーと思います。最近の映画だと海街Daiaryのようなテイストでぜひ…!

こんな宿屋に行ってみたい

海月と私(2) (アフタヌーンコミックス)

駅からも温泉からも遠い、海沿いの辺鄙なところにある小さな宿屋。昔銀座で板前をしていた主人と、気立ては良いが謎が多い美人中居のふたりでやっているその「とびうお荘」には、何やらワケあり客が多いご様子…。

海の音に包まれたその宿屋ではたゆたうようにゆったりとした時間が流れていて、訪れる人々は自分と向き合い、相手に向き合い、日常の生活では省みないような問題に向き合っていきます。

主人が作る釣りたて新鮮な海の幸がとにかく美味しそうで読んでいてお腹がすきました。お客さんが釣った魚をさばくシーンがあるのですが、そういう宿屋って割とあるんでしょうか?いつか行ってみたいですね。

もちろんいつも笑顔でコミュ力の高い美人中居・梢さんも魅力的。渋く若干枯れ気味の旦那さんと美人中居の組み合わせは、男性にも女性にもポイントが高い気がします。

明るく利発だけど胡散くさい美人中居・梢さん

海月と私(3) (アフタヌーンKC)

主人が出した急な住み込み求人を見て突然現れた謎の女性です。ところどころ謎めいてるんですが、人あしらいが上手過ぎて主人もお客さんも彼女にころころ転がされてしまいます。

それが物語を進める原動力でもあるんですが、その転がされる様子がどの人もまんざらでも無さそうで楽しく読むことが出来ます。いやー読んでいると本当に「男ってバカで単純…!」と思います(笑)でも、なんとなく男女関係はこんな風に女性に男性が転がされた方が案外うまくいくんじゃないかって思う今日この頃。

物語が進むにつれて彼女の謎も徐々に明かされ、最終巻ではそこから一気にクライマックスへとなだれ込みます。主人の気持ちの変化と、梢さんの種明かしは必見です。

人生の分岐点に立つ大人の物語

海月と私(4) (アフタヌーンコミックス)

「海月と私」に登場する登場人物の年齢層はちょっと高めで、人生の折り返し地点を迎えているような人達が多いです。そういう意味ではちょっと大人向けの漫画な気がします。多分、学生のころに読むよりも社会人になって結婚した今の方が読んで面白いと感じられてるんだろうなーと思いました。今読んで良かった!

個人的に好きなエピソードは、コメディ的に楽しい第1話の三角関係(?)、長年連れ添った雰囲気に惹かれるテレビ取材のときに居合わせた老夫婦、ほろ苦い経験と成長がまぶしい地元名士の娘さんの家出、あたりでしょうか。どのエピソードも楽しいですけどね。
ちゃんとしたかっこいい大人もいれば、どこまでもしょーもない大人もいる、ダメな人でもちょっとかわいい部分もあったりと…やー、人間って面白いなぁって思います(何様)

そして全編にわたって胡散くさくも魅力的な梢さんが素敵…!振り回される旦那さんが微笑ましい…!

綺麗に4巻で完結するので、あまり時間をとれない人にもお勧めの作品です。