読書感想:竜のかわいい七つの子(九井諒子)

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)

見たこともない物語のはじまり、はじまり
前代未聞の漫画ここにあり! 2年の沈黙を破って、九井諒子ワールドの幕がふたたび開く。
竜と人、人魚と野球少年、神様と小学生――それぞれの絆を題材とした過去の6作品に加え、全38ページの新作描き下ろし作品を収録。笑いあり、涙あり、きっとあなたが忘れていた、親と子の絆を思い出す7つ物語。
(amazonの内容紹介から引用させていただきました)

短編を多く手掛けている九井諒子さん、2冊目の単行本です。
九井さんの描く漫画は、ファンタジーでも現実味があり読んでいてとても引き込まれます。丁寧に感情が描かれているからでしょうか。短い話の中でも登場人物たちの感情をリアルに感じて、心動かされます。

「竜のかわいい七つの子」は7編からなる短編集ですが、個人的に好きだったのは『竜の小塔』と『狼は嘘をつかない』です。

『竜の小塔』では、竜を間に挟んで人と人の共生・理解を描いています。小国間の戦争という若干シリアスな内容ですが、一番惹かれた部分は主人公のユルカの表情です。物語が進み心情が変化するにつれて、どんどん可愛くなっていきます。他の物語でもそうですが、九井さんの描くキャラクターは表情豊かで魅力的です。

『狼は嘘をつかない』は、上記の内容紹介にあるように親子の絆をど真ん中に描いた作品です。僕がこの作品に惹かれた一番のポイントは“狼男症候群”という設定でした。少しネタバレになってしまうかもしれませんが、主人公である梅谷けー太くんは狼男になっている間は別人のようになり記憶を失ってしまいます。その別人になっている間にやらかした事によって物語は進んでいくのですが、着地点として狼男の自分も普段の自分も同じ自分であると受け入れるところが良かった。受け入れる事で主人公は新しい世界(人間関係)の扉を開けた気がします。これ、作中では狼男症候群というファンタジーな要素で際立たせて居ますが、自分が認めたくない自分なんていうのは誰の中にも多かれ少なかれ存在する話だと思うんですよね。結局は全部自分なんだから、あんまり嫌わないでそれを認めて生きれば良い、案外受け入れてくれる人は多いんだよって言われているような気がしました。

ここでは2編について感想を描きましたが他の5編も負けず劣らず面白いお話ばかりですので、「竜のかわいい七つの子」おすすめです。

あ、そうそう九井さんの最新作「ひきだしにテラリウム」が文化庁メディア芸術祭「マンガ部門」優秀賞と「このマンガがすごい!2014 オトコ編」で7位にランクインしています。こちらまだ読んでないんですが、買ってこようかなぁ…

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス(ハルタ))
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