2016年3月26日に結果発表された『テクネIDアワード2』のプログラミング部門に出品した作品が優秀賞を受賞しました!
去年は落選したアワードだったのでとても嬉しいです。
テクネIDアワードとは?
NHK Eテレの番組である『テクネ 映像の教室』で開催されたアワード。
テクネは毎回映像制作におけるひとつの”技法”をテーマに、世界の映像作品を紹介したり、気鋭のクリエイターが技法に沿った新作を撮ったりする、クリエイティブに興味がある人にとっては非常に面白い番組。
そんな番組の15秒のID映像を募集し、18の技法ごとに審査するのがこのテクネIDアワードです。今回で2回目であり、去年より部門も少し増えていました。
アイディアの経緯
応募しようとは思っていましたが、どの部門で応募するかは少し悩みました。
去年は”時間操作”の部門で2作品応募していたので、はじめは今年も時間操作かなぁと思って作り始めました。
…実は、応募しなかったけど”時間操作”でひとつ制作してたりします。
アイディア段階ではドラマチックに見えるんじゃないかと思って作ってみたものの、いざ作ってみるとイマイチでボツにしてしまいました。
去年もやったiPhoneでのハイスピード撮影と逆再生を別の題材で撮ってみたんですが、やりたかったことを魅力的に見せるには機材性能も足りないし、尺も15秒じゃ短すぎて、どうしても納得いかずに完成した後お蔵入りさせました。
そんなこんなで時間を食ってしまい「さてどうしよう、今年はやめようか…」とかも思ったんですが、今回から追加されたプログラミング部門が目に入り「そういえば前に作ったサンプルコードが使えるかも…?」と思い直し、そちらの方向性で作ってみることにしました。
以前作ったサンプルコードは以下の2つの機能がありました。
・ひらひら落ちる紙ふぶきの生成
・パーティクルを任意のカタチに集合させる
これが初めにあり、それをどういう風に扱えば映像として魅力的になるかという考えで企画を組み立てました。そうして最終的に採用したのが”桜ふぶきから集合してテクネのロゴになる”というアイディアでした。
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実際の風景ではまだ芽吹いてもいない桜の樹だけど、
スマートフォンをかざすとそこでは桜の花びらが舞っている。
そして画面をタッチすると、花びらが集まりTECHNEのロゴになる…。
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パーティクルの拡散と集合だけなら、スイミー的な魚の集合とか、蜂の隊列とか、他にも表現はありました。
そんな中で桜にした決め手は、実写での撮影との掛け合わせが出来る点と、アワード自体が桜の季節に放送だからでした。
僕はもともと実写の自主映画を撮っていた人間なので、全部プログラミングやモーショングラフィックにするような作品ではなく、どこか現実世界とリンクさせて情緒を感じられるものにしたかった。ロジカルで幾何学的なものもかっこいいですが、個人的には物語や詩的なものが好きです。プログラミング部門だと他にそういった雰囲気のものが少なそうという計算もありました。
桜なら近所にも樹がたくさんあるし、天気さえよければ撮影がすぐに出来るのも大きな要因でした。さすがに水中や蜂の巣は実写じゃ直ぐには厳しいですし。
とまあ、こんな経緯で企画を決めていきました。
制作工程
企画が決まってからの制作は早かったです。
プログラムのコア部分自体は事前にあったものを使用できるので、後は花びらのカタチにしたり、ロゴに集合するようにしたりと微調整で済みました(欲をいえば花びらのカタチはもう少し良くしたかったんですが…)。
ただ、当初は想定してなかった機能もひとつ実装しました。
ロケハンをして樹を決めるほど時間がなかったので、撮影場所が決まっていませんでした。そのためスマートフォンでその場で撮影した写真を、そのままプログラム内に組み込むためのコードが必要になりました。
本当は写真じゃなくて、その場でカメラを通した景色(動画)に対してARとして花びらを被せられれば良かったんですがJavascriptだと難しかったので写真で代用するしかありませんでした。アプリを作れればそれも出来たんですがね…。
まあ無いものねだりをしても時間は待ってくれないので、そこは撮影や編集でなるべく違和感がないように頑張りました。
そんなこんなで、『スマートフォンの画面上で、撮影した写真を取り込み、そこに桜ふぶきを被せ、画面をタッチするとロゴに集合する』というプログラムが完成しました。
あとは実写を撮影しに行くだけです。
スマートフォンの操作は妻に手伝ってもらい、僕は撮影に専念することにしました。
近所の河川敷や公園で、ちょうど良さそうな枝ぶりかつ、背景に余計なビルなどが入らない桜の樹を探しました。
見つけた場所は小さな公園で、子連れの家族が結構いました。三脚を立てて撮影の準備をする僕らはちらちら見られましたが気にしない気にしない…。
何度かテイクを重ねるうちに妻も慣れてきて、何回か良さそうなカットが撮れました。天気に恵まれて本当によかったです。
ただ撮影で地味に大変だったのが、晴天下の屋外ではスマホのバックライトじゃ暗すぎたこと。桜の樹と同じ露出ではスマホの画面は暗すぎてうまく撮れなかったんですよね。
被写界深度やズームはスムーズにしなきゃなぁとは思ってましたが撮影しながら露出もいじる羽目になるとは思いませんでした。
撮影のあとは、編集作業です。
1カットの作品なので、編集では色調整や15秒にちょうと収めるための時間操作くらいでそんなに時間はかかりませんでした。音楽と音声の選定も割とスムーズに決められましたね。
感想
去年のリベンジできたらなぁと思いつつも、一度作ったものをボツにして時間なくなったり、慌ただしく制作した今回のアワードでしたが結果受賞することが出来てとても嬉しかったです。去年だけでなく学生時代からデジスタ時代にも作品を応募して落選していたので感慨深いものがあります。
今回の賞は、「映像とWEBのふたつを武器にする」という自分の方向性にも沿っており受賞はとても励みになりました。
今後も日々精進していくので宜しくお願いします!